退去費用の相場ってどのくらい?外国人向け日本賃貸ガイド
日本で賃貸物件から退去する場合、「退去費用」が発生することがあります。
退去費用については日本人同士でもトラブルになることが多いため、事前にその内容をしっかり理解しておくことが大切です。
当記事では、日本の賃貸物件における退去費用の相場、退去費用を抑えるための方法、退去費用で揉めた場合の解決方法などについて解説します。
1.退去費用の基礎知識
まずは、日本の賃貸物件における退去費用とは何か、その基本的な部分について説明します。
退去費用とは
退去費用とは、賃貸物件から退去するときに借主が貸主に支払う費用のことです。
退去費用にはハウスクリーニング費用も含まれますが、原状回復費用が主要な項目となります。
借主は部屋の退去時に、元の状態に戻さなければなりません。これが「原状回復」です。
原状回復については賃貸契約の一部に含まれるため、借主は原状回復のための費用を支払う義務があります。これを、「原状回復義務」と言います。
退去費用の負担割合
借主には原状回復義務があるとはいえ、どの程度まで部屋を元の状態に戻さなければならないのでしょうか?
この点についてはトラブルも多いため、日本の国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で説明しています。
これによると、借主の故意・過失による傷や汚れは元の状態に戻さなければなりません。
しかし、経年劣化や通常使用による摩耗や損傷は、借主が負担する義務はありません。
【退去費用の負担割合の目安】
| 損傷・損耗の区分 | 例 | 費用負担者 | 説明 |
| 借主の故意・過失による損傷 | 大きな傷や穴、タバコのヤニによる汚れなど | 借主 | 借主の不注意や故意により発生した損傷は、借主が修繕費用を負担する。 |
| 借主の管理不足による損耗 | 換気扇の著しい汚れなど | 借主 | 借主の手入れ不足や管理の不備による通常を超えた損耗については、借主が負担する。 |
経年変化 (自然な老朽化) | 壁紙の色あせや黄ばみなど | 貸主 | 時間経過による劣化は賃料に含まれているため、貸主が負担する。 |
| 通常使用による損耗 | フローリングや畳の摩耗など | 貸主 | 日常生活で発生する自然な摩耗は、原則として貸主が負担する。 |
敷金と退去費用の関係
日本で賃貸物件を契約する際には、多くの場合「敷金」を支払う必要があります。
敷金は海外でのデポジットにあたり、原則として退去費用は敷金から差し引かれます。
しかし退去費用が敷金を上回る場合は、借主がその分を追加で支払わなくてはなりません。
敷金についてさらに詳しくは、「日本の敷金・礼金とは?賃貸契約を成功させるための完全ガイド」をご覧ください。
2.賃貸物件の退去費用相場
退去費用の金額は、様々な要因によって決まります。
ここでは退去費用にまつわる要因を挙げながら、退去費用の相場を探っていきます。
部屋の間取りと大きさ
退去費用にはクリーニング費用も含まれます。ハウスクリーニング費用の相場は、1㎡あたり1,000円程度ですから、例えば30㎡の部屋の場合は約30,000円となります。
それ以外の原状回復費用や修繕費も含めた退去費用の相場は、次のようになっています。
【部屋の間取りと大きさによる退去費用の目安】
| 間取り | 広さ | 退去費用の目安 |
| ワンルーム〜1LDK | 20㎡〜30㎡ | 50,000円前後 |
| 2K〜2LDK | 30㎡〜40㎡ | 80,000円前後 |
| 3LDK〜 | 40㎡〜 | 90,000円〜 |
居住年数
一般的に居住年数が長くなるほど、退去費用の金額も上がっていきます。
しかし同時に建物の経年劣化も進むため、借主の負担割合自体は減る傾向にあります。
そうした点を鑑みたうえでの、居住年数による退去費用の目安は以下の通りです。
【居住年数による退去費用の目安】
| 居住年数 | 退去費用の目安 |
| 2年以内 | 50,000円前後 |
| 2年〜6年 | 60,000円前後 |
| 6年〜 | 90,000円前後 |
部屋の大きさと居住年数による退去費用の目安を挙げましたが、この2つの金額は合算されるものではありません。両方を比較して退去費用の相場をイメージしてください。
例えばワンルームの部屋に2年間住んだ場合の退去費用の目安は50,000円程度となりますが、同じ部屋に4年間住んだ場合は、退去費用は60,000円程度まで上がるかもしれない、というイメージです。
修繕費用
借主が故意・過失によって部屋の一部を損傷してしまった場合は、原状回復のために修繕しなければなりません。
その場合の費用の目安は、以下の通りです。
【修繕費用目安】
| 修繕内容 | 損傷・損耗の原因 | 費用相場 |
| 壁紙の張り替え | タバコのヤニや管理不足による汚れなど | 30,000円〜50,000円 |
| 壁や天井のボード取り替え | 壁に穴を開けたり深い傷をつけた、天井の一部を破損してしまったなど | 30,000円〜60,000円 |
| フローリングの張り替え | 床をへこませた、深い傷をつけたなど | 80,000円〜300,000円 |
| 水垢やカビの除去 | 掃除や手入れを怠り、水垢やカビを著しく発生させた | 10,000円〜30,000円 |
| 換気扇(レンジフード)の取り替え | 掃除や手入れを怠り、換気扇を著しく汚した | 10,000円〜50,000円 |
ペット可の物件の場合
日本の賃貸物件では許可されていない限り、ペットを飼うことはできません。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、日本の賃貸物件においてペットによる傷や汚れは通常使用による損耗とはみなされず、原則として借主の負担で原状回復しなければなりません。
例えばペットの臭いが染み付いた場合、壁紙の全面張り替えが必要になる場合もあります。
そのため、ペット可の賃貸物件ではあらかじめ敷金が高く設定されるケースも多く、契約内容にも退去時の原状回復について特約が設けられていることがほとんどです。事前に内容を確認しておいてください。
公営住宅の場合
日本の公営住宅では退去費用が一般の賃貸物件よりも高額になるケースが多く、その相場は300,000円〜600,000円と言われています。
公営住宅で退去費用が高額になるのは、経年劣化や通常使用による摩耗や損傷も、原状回復の範囲に含まれるからです。
例えば壁紙やフローリングの色褪せなどは、一般の賃貸物件では通常使用による摩耗となり、借主が負担する義務はありません。しかし公営住宅ではそうした費用も、借主の負担となります。
公営住宅では家賃が安く設定されている分、原状回復の範囲も広く設定されているわけです。
ただし、どこまで原状回復が必要かは自治体によって異なるため、事前に確認してください。
3.退去費用で揉めないための注意点
退去費用は自分が思ってもいなかった費用が請求されることもあるため、トラブルになりがちです。
退去時のトラブルを避けるために、借主が事前にできることを解説します。
多言語対応の不動産会社を利用する
退去費用も含め、契約内容を確認して安心して入居するためにも、外国人は多言語に対応している不動産会社を利用なさってください。
例えばMooovinなら、英語のほかに中国語やベトナム語にも対応しています。
万が一トラブルになった場合にも、多言語対応の不動産会社なら相談しやすいでしょう。
契約時のチェックポイント
契約時には原状回復に関わる部分、特に特約条項の内容もしっかり確認してください。
例えば「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常使用による汚れのクリーニング費用は貸主の負担となっています。
ですが特約で「ハウスクリーニング代は借主の負担」となっている場合は、借主が費用を支払わなければなりません。
ほかにも特約の内容が曖昧であったり、契約時に十分な説明がない場合は退去時にトラブルに発展しがちです。契約時に原状回復の範囲についてしっかりとした説明がない物件については、注意してください。
また敷金ゼロ円の物件では、退去時のハウスクリーニング費用は借主の負担となっていることがほとんどです。
修繕費も実費となりますから、敷金ゼロ円物件の場合は特に契約書の原状回復特約の内容をしっかりチェックしてください。
4.退去費用を節約するための実践的アドバイス
普段の生活の仕方や心がけ次第で、退去費用を可能な限り低く抑えることは可能です。
ここからは、退去費用を節約するための実践的な方法を紹介します。
入居時に汚れや傷を記録する
部屋が決まったら、可能なら引っ越し前(家具を運び入れる前)に、部屋の傷や設備の不具合がある箇所を記録に残しておきましょう。
不動産会社によっては、部屋の状況を客観的に確認するための「入居チェック表」を用意してくれるところもあります。
ですが、自分でもぜひスマホなどを使って画像の記録を残しておくと、退去時のトラブルを避けることができるでしょう。
タバコは室外で
喫煙によって壁紙などに汚れや匂いがついてしまった場合の原状回復は、借主の負担になります。
部屋全体の壁紙の張り替えを要求されることもあるため、可能な限り室内での喫煙は避けたほうが退去費用の節約につながります。
とはいえ、アパートなどによってはベランダでの喫煙が禁じられているところもあります。
ベランダや共用部分での喫煙が可能かどうか、事前に確認なさってください。
DIYは避ける
ポスターやカレンダーを張ったりするための画鋲の穴は、通常使用による摩耗とみなされ、借主に原状回復の費用負担は求められません。
しかしネジや釘を使って壁に穴を開けてしまうと故意の損傷とみなされ、修繕費用が請求されます。壁紙だけではなくボードの交換まで加わると、退去費用も高額になってしまいます。
貸主から許可を受けていない限り、部屋に傷をつけるようなDIYは避けてください。
掃除はこまめに
普通に生活している中で生じる汚れや損傷の原状回復は、貸主の負担となります。
しかし、掃除やメンテナンスを怠った結果としての汚れや損傷は、借主の責任で原状回復しなければなりません。
外国人が入居してトラブルになりがちなのが、換気扇まわりです。日本人よりも油を多く使って料理をすることが多いためか、レンジフードも汚れやすい傾向にあります。汚れを放っておくと退去時にレンジフードの交換を要求されることもあります。ぜひ、換気扇まわりはこまめに掃除してください。
また、日本の梅雨から夏にかけての時期は湿度も非常に高くなります。お風呂や水回りはカビが発生しやすくなるため、普段から気にかけましょう。
5.退去費用の金額に納得できないとき
気をつけていたにも関わらず、退去時に想像を超える退去費用が請求されたらどうしたら良いでしょうか?
ガイドラインを確認する
まずはガイドラインを確認して、請求された原状回復費用が正当なものかどうか確認しましょう。
とはいえ、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は日本語しかありません。
代わりに、東京都が作成した「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を参照すると良いでしょう。
英語版のダウンロードはこちら。
不動産会社に相談する
原状回復費用が大家さんから請求された場合、不動産会社に相談してみましょう。
多言語対応の不動産会社なら、こうしたトラブル時にも安心できます。
消費者生活センターに相談する
大家さんや不動産会社と交渉しても納得がいかない場合は、消費者生活センターに相談することもできます。
東京都消費生活総合センターでは、英語・中国語・韓国語・タガログ語・ベトナム語の通訳者を介して、無料で相談できます。
- 電話番号:03-3235-1155
- 受付時間:月曜日〜土曜日/午前9時〜午後5時(ベトナム語は土曜日/午前10時〜午後5時まで)
弁護士などの専門家に相談する
最後の手段として、弁護士や司法書士などの法律の専門家に相談することもできます。
民事調停という、裁判よりも手間も費用も少ない方法でトラブルの解決が図れます。