家賃滞納は厳禁!日本の賃貸住宅で覚えておくべきルールを外国人向けに解説
日本での新しい生活。自分にピッタリの物件が見つかって、期待に胸を膨らませていることでしょう。
しかし、日本の賃貸住宅を利用する際には、絶対に知っておかなければならない重要なルールがあります。
それが「家賃の期日通りの支払い」です。
当記事では、日本で家賃滞納がどうしてそれほどシビアなのか、万が一家賃の支払いが遅れるとどうなるか、家賃滞納を避けるための方法などについて説明します。
日本で快適な生活を送るためにも、ぜひ参考になさってください。
1.外国人に家賃トラブルが起きる理由
意図的に家賃の支払いを拒否するという人はほとんどいないでしょう。あなたも家賃を毎月きちんと支払うのは当たり前のことだと思っているはずです。
しかし、結果的に家賃トラブルが生じる、外国人特有の理由というものもあるのです。
文化や商習慣の違い
日本では時間を守ることが何よりも大切だ、という考えが社会に浸透しています。あなたも、日本では電車が時刻通りに到着するのに驚いたかもしれません。
さらに、約束(契約)を守ることも非常に重視されます。
こうした文化的な背景から、家賃の支払いに対しても「1日たりとも遅れてはならない」というのが基本的な考え方です。
国によっては「数日くらいの遅れは大目に見てもらえる」、「事情を話せば理解してくれるだろう」という文化があるかもしれません。しかし、日本では支払日の期日を守ることは絶対です。この「期日に対する厳しさ」の感覚の違いが、トラブルの第一歩になってしまうことがあります。
言語の壁によるコミュニケーション不足
賃貸借契約書は、法律に関する専門的な言葉が多く、日本人にとっても難しいものです。外国人にとってはなおさらでしょう。
特に、家賃の支払日、支払い方法、遅れた場合のペナルティ(遅延損害金)といった重要な項目を見落としてしまう可能性があります。また、万が一支払いが遅れた際に、管理会社からの電話や手紙の内容が正確に理解できず、知らず知らずのうちに状況を悪化させてしまうケースも少なくありません。
2.家賃滞納が引き起こす5つの深刻なリスク
たとえ悪気がないとしても、家賃を支払うのが遅れたらどうなるでしょうか?
ここでは、家賃滞納が引き起こす5つのリスクについて説明します。
遅延損害金の発生
家賃の支払いが期日に間に合わないと、その翌日から「遅延損害金」という追加料金が発生します。これは、約束を破ったことに対するペナルティ料金です。
利率は賃貸借契約書に定められていますが、法律上の上限である「年14.6%」に設定されていることが一般的です。
【計算例】
家賃10万円を30日間滞納した場合(年率14.6%)
- 100,000円 × 0.146 ÷ 365日 × 30日 = 約1,200円
「少額だから平気」と放置していると、延滞金だけで数万円になることも珍しくありません。また後述しますが、家賃滞納の結果として支払うのは遅延損害金だけではないので、全てを合わせるとかなりの額となってしまいます。
連帯保証人への影響
日本の賃貸契約では、多くの場合「連帯保証人」が必要です。連帯保証人とは、もしあなたが家賃を支払えなくなった場合に、あなたに代わって支払う義務を負う人のことです。
あなたが家賃を滞納すると、大家さんや管理会社はすぐに連帯保証人へ連絡し、支払いを請求します。結果として連帯保証人になってくれた家族や友人に、金銭的な負担と多大な心配をかけてしまうことになるのです。これは、日本での人間関係において、非常に大きな問題となります。
連帯保証人について更に詳しくは、
「保証人がいなくても大丈夫?外国人向け日本の賃貸物件保証完全ガイド」をご覧ください。
信用情報への影響
賃貸契約を結ぶためには、家賃保証会社(後述します)の利用が必須の物件が増えています。保証会社の中には、クレジットカード会社などの「信販系」と呼ばれる会社があります。
もし信販系の保証会社を利用していて家賃を滞納すると、その情報が「信用情報機関」に記録される可能性があります。信用情報とは、個人のローンやクレジットカードの利用履歴のことで、この情報に傷がついてしまうと、将来、以下のような審査に通らなくなる恐れがあります。
- 新しいクレジットカードが作れない
- スマートフォンや車のローンが組めない
- 別の部屋を借りる際の入居審査に落ちる
家賃を滞納することで、結果として日本での生活設計そのものに長期的な悪影響を及ぼすことになるのです。
裁判になることも
電話や手紙での督促を無視し続け、滞納期間が数ヶ月に及ぶと、大家さんや管理会社は法的な手続きを開始します。
最終的には「建物明け渡し請求訴訟」という裁判を起こされる可能性があります。裁判所から通知が届き、出廷を求められます。裁判で敗訴が確定すると、法的に部屋を明け渡さなければなりません。
さらに部屋から退去するだけではなく、裁判費用も発生します。
家賃を3ヶ月以上滞納している場合、借主に特別な理由がない限り、裁判では大家さん側が勝訴(つまり借主側が敗訴)します。
そして日本の民事裁判では「敗訴者負担」が原則。つまり、裁判に負けた方が、裁判手続きにかかった費用を支払わなければならないということです。
裁判費用は数十万円から、場合によっては100万円以上になることもあり、その費用は家賃を滞納したあなたが負担しなければなりません。
そのため、最終的に滞納した家賃や遅延損害金に加えて、裁判にかかった費用もあなたが支払う義務を負うことになるのです。
強制退去
裁判で敗訴してもなお部屋を明け渡さない場合、最終手段として「強制執行」が行われます。これは、裁判所の執行官があなたの部屋にやって来て、中の荷物をすべて運び出し、強制的に退去させる手続きのことを言います。
考えてみてください。ある日突然、自分の意志とは関係なく、住む家を失ってしまう。これは家賃滞納がもたらす最も深刻な結末です。
さらに、費用も発生します。荷物の運び出し費用や、運び出した費用を一時的に保管するための保管費用、荷物を処分する際にはその処分費用、これも全てあなたが支払わなくてはなりません。部屋の広さや荷物の量によりますが、ワンルームでも数十万円、ファミリータイプの部屋では100万円を超えることも珍しくありません。
3.家賃滞納から強制退去までの流れ
家賃滞納から強制退去までには、主に次のステップを踏んでいきます。
- 支払い期日の翌日〜1週間:電話や手紙で、家賃未納に関する連絡が届く。うっかり忘れていた場合、この時点ですぐに支払えば大きな問題にはなりません。
- 滞納から1ヶ月:貸主側から、連帯保証人・保証会社への連絡が入る。「契約者が家賃を支払っていないので、代わりに支払ってください」という請求です。この段階で、あなたの信用は大きく損なわれ始めます。
- 滞納から2〜3ヶ月:内容証明郵便で家賃支払の督促・契約解除予告が届く。内容証明郵便とは、「いつ、誰が、どのような内容の文書を送ったか」を証明するもので、法的な手続きを始める前の最終警告という意味合いを持ちます。
- 滞納から3ヶ月以上:裁判・強制退去へ。一般的に滞納期間が3ヶ月以上に達すると、大家さん側が契約解除を法的に主張できる「信頼関係破壊」の状態と見なされやすくなります。大家さんは裁判所に訴訟を起こし、判決が出れば強制退去の手続きへと進んでいきます。
このように、家賃の支払いが遅れたからといって、すぐに、裁判・強制退去となるわけではありません。
しかしそこに至るまでの過程をリアルに知ることで、家賃滞納を避けようという決意が強まるでしょう。
4.滞納してしまったら?家賃滞納時にすべきこと
もしも家賃の支払いが遅れたとしても、しっかりとした対応を取れば最悪の結果を回避することができます。
何らかの事情で家賃を滞納してしまったときの、あなたが取るべき対応について説明します。
すぐに大家さん・管理会社に連絡する
家賃の支払いが遅れた時に、絶対にやってはいけないのが「無視すること」と「嘘をつくこと」です。
支払いが遅れた、もしくは遅れると分かった時点で、できるだけ早く自分から大家さんや管理会社に連絡しましょう。連絡を待つのではなく、自分から正直に状況を話すことが大切です。誠実な態度は、相手に「支払う意思はある」と伝える最も良い方法です。
特にそれが初めての滞納であれば、自分から連絡することで相手もあなたの事情を理解してくれるでしょう。
支払期日を明確に伝える
連絡する際は、ただ「払えません」と伝えるだけではいけません。「なぜ遅れているのか」という理由を簡潔に説明し、「いつまでに支払えるのか」という具体的な日付を約束しましょう。
もし約束した期日に支払いが難しい場合は、必ずその期日より前に再度連絡を入れ、相談することが信頼を維持する鍵です。
もし支払いの目処が立たない場合の相談先リスト
どうしても自分だけでは解決できない場合、一人で悩まないでください。日本には、外国人をサポートしてくれる公的な窓口や団体があります。
- 自治体の外国人相談窓口
- NPO法人などの支援団体
- 大使館・領事館
これらの機関があなたの家賃を代わりに支払ってくれることはありませんが、あなたの状況に応じて専門家の紹介など、必要なサポートを得られるでしょう。
5.データで見る日本の家賃滞納のリアル
では、実際に日本ではどの程度、家賃滞納が生じているのでしょうか?
実際のデータを見てみましょう。
日本全体の家賃滞納率
日本賃貸住宅管理協会の調査によると、2022年の1年間に1ヶ月の家賃が滞納が発生した率は全国平均で0.8%、2ヶ月以上の滞納率は0.3%となっています(外国人に限らない、日本全体のデータ)。
これは、1,000人の入居者がいれば、そのうち8人が1ヶ月の滞納を、3人が2ヶ月以上の深刻な滞納をしている計算になります。決して高い数字ではありませんが、大家さんや管理会社にとっては日常的に発生しうるリスクであることが分かります。
滞納=即退去ではない?
2ヶ月以上滞納した人の割合は0.3%、これは賃貸住宅の個数にするとおよそ71,000戸となります。
この内、裁判・強制退去まで至ったのは5,609件、つまり約8%です。
この数字からも分かるように、家賃を1ヶ月滞納したからといって、すぐに「強制退去」になるわけではありません。法的な手続きには時間と費用がかかるため、大家さん側もできれば話し合いで解決したいと考えています。
つまり重要なのは、やはり滞納してしまった後のあなたの対応だということです。
誠実に連絡を取り、支払いの意思を見せることができれば、大家さんとの信頼関係は維持でき、退去という最悪の事態を避けられる可能性が高まります。逆に、連絡を無視し続けると、信頼関係は完全に破壊され、法的な手続きへと進まざるを得なくなるでしょう。
6.家賃滞納を防ぐための4つの予防策
家賃滞納が引き起こすリスクについて十分に理解できたところで、予期せぬ家賃滞納を避けるための実際的な方法をいくつか提案します。
「保証会社」を正しく理解する
日本の賃貸契約では、連帯保証人を立てることが求められます。しかし来日したばかりの外国人のように、日本国内に保証人になれる家族や親族がいない人が代わりに利用できるのが、保証会社です。
保証会社はあなたが家賃を滞納した場合に、一時的に家賃を立て替えて大家さんに支払ってくれる会社のことです。
しかし勘違いしないでください。保証会社は家賃を建て替えるだけで、あなたが最終的に家賃を支払わなくてはならないことに変わりはありません。
むしろ保証会社は借主への請求・取立てを専門的に行う会社なので、その取り立てはより厳しいものになるのが一般的です。
そのため、保証会社は家賃滞納時の一種の「保険」であり、家賃は必ず支払わなければならない、ということを覚えておきましょう。
口座振替やクレジットカード払いを活用する
無用な家賃滞納を避けるのに一番現実的で、効果的な方法が、支払いを口座振替やクレジットカード払いにすることです。
口座振替やクレジットカード払いなら、毎月決まった時期に、自動的に家賃が指定の口座・クレジットカードから引き落とされます。
最近では賃貸契約時に、ほぼ口座振替やクレジットカード払いが求められるので、契約までに日本の銀行口座もしくは日本でも使えるクレジットカードを用意しておきましょう。
日本の銀行口座の開設方法については、「日本の賃貸契約を成功させる!外国人向け不動産審査基準対策ガイド」も参考になさってください。
契約書を細かくチェック
契約書にサインをする前に、内容をしっかりと確認することがトラブル防止の基本です。特に、以下の項目は必ずチェックしてください。
- 賃料と共益費の金額
- 支払期日:毎月何日か
- 支払方法:振込、口座振替など
- 振込手数料は誰が負担するか
- 遅延損害金の利率
可能ならば英語の契約書を用意してもらう、不動産会社の担当者に説明を求める、日本語が分かる友人や支援団体に同席してもらったりするなど、内容を100%理解した上でサインするようにしてください。
無理のない家賃の物件を選ぶ
そもそも、自分の収入に見合わない高すぎる家賃の物件を選んでしまうと、滞納のリスクは高まります。
日本では一般的に、無理なく支払える家賃の目安は「手取り月収の3分の1以内」と言われています。
例えば、税金などが引かれた後の手取り月収が24万円なら、家賃は8万円以内が妥当なラインです。
物件を探す際は、この基準を意識して、自分の収入と生活費のバランスを考えた上で決めるようにしましょう。